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ベルリンの旅行犬、インスタレーション (2019) アクセル・オービガー・ギャラリー、ベルリン(ドイツ) ![]() klunkerdesalltags(2019年5月29日) 文/写真:シュテファニー・イェッケル 旅行犬 たとえ姿が見えなくても、それは確かにいる。GUP-pyの言葉が本当なら、旅行犬は私たちの心の中にいる。人がふと旅行に行きたくなったり、遠くに想いを馳せるのは一体なぜなのか。実は、それこそが旅行犬の役目。旅行犬が紐を引っ張って、飼い主を外に連れ出すのだ。 近代以降、意外性は美術の中核を成す。一体何がどうなっているのか? 思っていることが全く違っているとしたら? GUP-py(グッピー)とは自然界においては小型淡水魚の一種であるが、この作家は自身をGUP-pyと名乗り、物事を通常とは違った視点から観察することによって長年制作活動を続けている。映像、空間インスタレーション、写真、本など、どのメディアの場合でも根底にあるのは、私たちが当然と思い込んでいる事柄は果たしてその通りなのかという疑問である。表現スタイルは極めて控えめであり、展示空間の壁に描かれた、コンピューターグラフィックを思わせるシンプルな黒いラインは現実空間に重なり、観る者の想像力を刺激する。ただ旅行犬のみが、空気穴のあいたスーツケースの形のオブジェとして床の上に待機しているのだが、いつでも空間から消え去る心構えでいる。微小なズレ、やや不規則な点の配列、斜線、非対称といった要素は鑑賞者の視覚に敏感に作用し、現実と架空の境界領域で、鑑賞者は独自の想像力を広げることが可能になる。 ただし「人間とは何か」という根本的な疑問は依然として残っている。日常生活を過ごしたり旅行に出かけることを考えている時、人間としての自分はそもそも何をしているのか? この問いが、このごく小さな空間から連想させられるから面白い。素朴なレイアウトの背後には皮肉めいたユーモアが垣間見える。私たちの内部の旅行犬にとっては実際のところ、真面目な考え方や常識はとっくに通用しない。犬は奔放に駆け回り、軽やかに跳躍し、飼い主をあちこち翻弄する。誰にでも身に覚えがあるだろうが、旅行から戻って犬が元の住処におさまるやいなや、もう次の旅行は始まろうとしている。特に秀逸なのは、El Fulminador(本名:Andres Castellano)によるビートの効いたサウンドに彩られた短編映像作品であるが、ここではテンポの早いアニメーションが、犬と人間の世界を行き来する。本展覧会はベルリンのアクセル・オービガー・ギャラリーにて、2019年6月1日まで開催される。
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